証券取引所

株の取引を行うイメージは上の写真のような男たちが大声でやりとりしている風景を想像しがちですが、現在ではほぼすべての取引がコンピュータ上でされており、パソコンでボタンを押すと、瞬時に取引が完了するようになっています。

個人投資家もインターネットを通じて、簡単に注文を出すことができます。パソコンの画面上には様々なデータが表示され、公正・クリーンな取引のイメージを演出していますが、実際には買い注文のボタンを押した後にどのような処理が行われているのか、利用者側にはまるでわからないブラックボックスになっています。専門家と言われる人であっても、たいてい中でどのようなことが起こっているのかわかっていません。見えないところでなされることには、残念ながら不正がはびこるのが世の常です。

超高速取引

インターネットは1秒の1000分の1である1ミリ秒の単位でデータのやり取りを行います。たとえばyahoo.co.jpは日本国内にサーバーがあるため、わずか10ミリ秒でパソコンからデータを送信できます。アメリカにサーバーがある、cnn.comへデータを送信するにはどのくらいかかるでしょうか。日本とアメリカの実際の距離は約10,000km以上あり、飛行機では10時間以上かかります。しかしインターネットでは170ミリ秒でデータが届きます。人間の瞬きの速度は150ミリ秒と言われているので、瞬きをしている間に情報のやり取りが終わっているのです。

しかしこのデータの速度が速ければ速いほど、他人よりも早く注文を出せるため、どんどん注文速度を上げる技術が発達しました。高速のプログラムでコンピュータに処理をさせ、今ではミリ秒のさらに1000分の1の「マイクロ秒」が単位として使われるほどです。このような速度で行う取引を超高速取引(HFT)と言います。

このスピードで取引ができるため、一般投資家がインターネットで1度買い注文を出す間に、超高速取引業者は軽く100回は注文を出せます。つまり、究極のあと出しジャンケンで、相手の出方を伺ってから自分の出すものを決められるのです。超高速取引業者のヴァ―チュ・フィナンシャルは、5年間で1237勝1敗であったと発表しました。その1敗は注文ミスだったので、ほぼ100%の勝率です。一般投資家が彼らとまともに戦って勝てるはずがありません。

スピードをあげるために、超高速取引業者は証券取引所のサーバーのすぐそばに自社のサーバーを設置します。地中には特別な光回線を引き込み、他社よりわずかでも速いスピードを追及しています。その場所に設置すれば取引で必ず勝てるので、お金に糸目をつけません。当然そのような有利な場所にサーバーを置くには莫大なサーバーの場所代をとるし、特別な回線の使用料もとるし、超高速取引の手数料もとるというビジネスが行われています。超高速取引業者、取引所、大手投資銀行はグルになっており、なにも知らない投資家からお金を吸い上げていたのです。世界の金融の中心ではこのようなことが行われています。買い注文ボタンを押しても、値動きが激しくて約定できない、ということにもできるし、急激な値動きを一時的に作り出すこともできるのです。日本では私達の年金の大半を、株に投資することが決まりました。これはお腹を空かせた狼の元へ、子羊を差し出すようなものです。

技術者は最新技術の開発に酔う

超高速取引のプログラムを書く技術者は、その黒い目的を知らずに開発しています。技術者は技術を追及することを楽しんで行いますが、その技術がどのような目的で使われるのか知りもせず、わずか数マイクロ秒でも速い最新技術を追求し、高い報酬で都合よく使われているのです。

このように市場は「公正な自由競争」とうたいながら、裏では不公平な競争が行われています。金融に人々を熱中させ、経済が動かされ、政治を動かされ、戦争が引き起こされています。そもそも摘発しようのないインサイダー情報で大きな額が動いていますし、法の隙間をぬって、持っている者が自分たちだけ利益を得る動きが今も続いているのです。

マタイによる福音書 6:24 だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。
参考文献:フラッシュボーイズ(2014年)文芸春秋 マイケル・ルイス